ART|生殖補助医療とは ASSISTED REPRODUCTIVE TECHNOLOGY
ART〈Assisted Reproductive Technology〉 生殖補助医療とは、体外で精子・卵子や受精卵(胚)の操作を行う不妊治療のことです。
体外受精・胚移植、顕微授精、胚凍結・融解移植などがあります。
日本だけで年間40,000人以上がARTによって産まれています。これは、ARTが特別なものではなく、社会的にも認められていることを意味しています。
当院の体外受精 ART
- 1
当院の体外受精はクロミフェン周期で行います。不必要な排卵誘発剤は使用しません。
- 2
妊娠の可能性のある胚盤胞を凍結します。胚移植は次の周期に行います。
- 3
胚移植数は1個です。詳しくは凍結後に説明します。
体外受精には大量の排卵誘発剤を使ってできるだけたくさんの卵を採り、たくさんの胚を移植しようとする過排卵刺激法があります。
しかし、このような排卵誘発法を繰り返すと卵巣の機能が低下し、卵の質を悪くしてしまいます。
当院では「自然周期法」での体外受精を取り入れています。
クロミフェンを服用し、必要に応じて最少量の排卵誘発剤を注射します。
身体に優しく、精神的、経済的に負担の軽いローリスクな体外受精法です。
低刺激法 体外受精の流れ COURSE OF TREATMENT

1. 卵を育てる
月経 3日目頃/内診(エコー診)・血液検査
エコー診察にて卵巣が腫れていないことを確認後、「クロミッド錠」を採卵決定まで1日1錠ずつ服用します。
月経 8日目頃/内診(エコー診)
内診を行い卵胞の成長を診ます。 ※ 必要に応じて排卵誘発剤の注射をします。
採卵日より2日前/血液検査・採卵日決定
来院、内診・血液検査を行い採卵日を決定します。
採卵35時間前/ご自宅でブセレリン点鼻

2. 採卵
奥様:受付→採卵→診察
・ごく細い針を穿刺し採卵します。
・採卵は5分ほどで終了し、すぐに帰宅できます。
・炎症予防のために抗生物質が処方されます。
・採卵後、説明があります。
*採卵をする前に排卵することがあります。採卵で卵が採れないことがあります。
旦那様:精液を当院で採取、または自宅で採取しご持参ください。

3. 受精方法
体外受精法
卵子が入っている培養液に一定濃度の精子を入れ、自然な受精を待ちます。
*体外受精をご希望の方でも精子濃度が十分でない場合は、顕微授精を行う場合があります。
顕微授精法
顕微鏡下で卵子と精子を見ながら精子を1匹、卵子の細胞質内に注入します。
精子数が極端に少なくても受精が可能です。

4. 凍結
受精した胚が妊娠の可能性のある胚盤胞へ成長後、凍結します。
*すべての卵が受精、分割して胚盤胞になるとは限りません。

5. 移植
超音波で子宮を見ながら移植します。移植処置後はすぐにご帰宅できます。
子宮内膜の厚さが十分でない場合は移植日が延期になります。
*凍結胚ができた方に限ります。
*胚を凍結せずに採卵周期で移植する方法もございます。詳しくはお尋ねください。
孵化補助法 (Assisted Hatching:AHA)
胚盤胞が子宮内膜に着床する時、透明帯という胚を覆っている殻を破って自ら飛び出す「孵化(ふか)」と呼ばれる現象を起こします。
しかし、たとえ良い受精卵であってもこの孵化がうまくできなかった場合、着床することはできません。
凍結胚や高年齢の方の卵は透明帯が硬く、厚くなると言われています。
このような場合には予め、透明帯に穴を開けたり、薄くする処理を行うことで孵化しやすくなります。
これを孵化補助法といいます。
孵化補助法にはいくつかの方法がありますが、当院では、最も胚に優しいと言われているレーザー法を採用しています。
紡錘体可視化装置の導入
当院では、卵子の紡錘体の位置や状態を確認しながら顕微授精を行っています。
卵子を詳細に確認することで染色体を傷付ける可能性を減らします。
また、最適な核成熟の時に顕微授精を施行することが可能となり、丁寧で精密度が高くさらに卵子にやさしい方法でおこなっています。
シート法 (SEET法)
体外受精をする過程で受精卵を体外で培養し、胚盤胞に育ったら一旦凍結します。その際にこの受精卵が育った培養液も別に凍結しておきます。
この培養液には受精卵から放出された着床因子が含まれており、移植日の2〜3日前に子宮に注入することで、子宮内膜が刺激を受け着床しやすい状態になると言われています。
ご希望の方は採卵までの診察時にお申し付けください。
カルシウムイオノフォア (卵子活性化処理法)
カルシウムイオノフォアとは、卵子の膜をカルシウムイオンが透過するのを促進する物質のことです。卵子の活性化を起こすために用います。
顕微授精の際にカルシウムイオノフォアを用いることで、分割率や胚盤胞到達率が上昇したという報告もあります。
しかし、カルシウムイオノフォアは全ての卵子・受精方法に有用というわけではありません。卵子側に問題があって受精しない場合など、カルシウムイオノフォアが有効でない場合もあります。
また通常の体外受精では、精子が卵子に入り込むタイミングが特定できないため、カルシウムイオノフォアは使用出来ません。
カルシウムイオノフォアは使用期限が非常に短いため、ご依頼があってからの注文となるので、ご希望の方はお早め(生理3日目頃)に診察時にお申し付けください。